今年日本に一時帰国した時に気付いたんですが、日本でもFIREが流行ってるみたいです。FIREをご存じない人の為に説明しておくと、FIREとはFinancial Independence(経済的自立) Early Retire(早期リタイア)の頭文字をとった早期リタイア戦略です。
私もFIREに関する書籍を読んだことがあります。それらの本に倣って、固定費を低くし、無駄な支出を控えて、毎月あまったお金をインデックス(ETF)に替えて…みたいな生活を去年から送っています。

じゃあ自分も早期リタイア目指して日々節約に励んでいるのかというと、別にそういうわけではありません。むしろ早期リタイアは(少なくとも自分にとっては)目的であるべきではない気がするんです。今日はその理由について書こうかと。
目次
理由1:引退しても、最終的には今と変わらない生活に落ち着いてそうな気がするから
「もし金が無限にあったら、どうするだろう」みたいな想像、誰でも1度はしたことあるんじゃないでしょうか。もちろん私にもあります。以下、私の脳内の高橋Aと高橋Bによる「もし金に困らなくなったら何をするか」という会話です。
高橋A「もし金に困らなくなったらどうする?」
高橋B「まず会社を辞める」
高橋A「それから?」
高橋B「自力でビザを取れそうな国に行く」
高橋A「それから?」
高橋B「毎日美味いものを食いに行く」
高橋A「それから?」
高橋B「家政婦かハウスキーパー付きのアパートに住んでみたいな。家事しなくて済むようになるからすごく快適そう」
高橋A「それから?」
高橋B「植毛手術を受けてみたい。ここ数年、生え際が後退してきてるから…」
高橋A「それから?」
高橋B「飽きるまで旅行をする。東南アジアと南米に行ってみたいな」
高橋A「それから?」
高橋B「それから…うーん…それからは別にやりたいことも買いたいものもないな。車とか家なんて持っちゃったら別の国に移住したくなった時に邪魔になりそうだし、メンテするの面倒くさそうだから、買ってもいずれ売るんじゃないかな。服だってH&Mで売ってるやつで満足だし。もし家族ができたら家族の面倒を見てれば時間が勝手に過ぎてくんだろうけど、もしずっと独身だったら学生に戻ってコンピューターサイエンスか外国語の勉強をして、ウェブ開発を続けて、読書しながら残りの人生を過ごすんじゃないのかな。あ、それと筋トレの頻度を増やしたいな。あとは…2週間ぐらいの海外旅行を年に1~2回ぐらいすれば十分かな」
ふむ。じゃあ俺が人生で最終的にやりたいことは(1)勉強、(2)ウェブ開発、(3)読書、(4)筋トレ、(5)1年に1~2回の海外旅行ってことか。あれ?俺もうとっくにそんな生活できてるじゃん。早期リタイアする必要あるのか?
理由2:「引退が目的=今の毎日が嫌い」だと暗に認めているようなものだから
早期リタイアを目指している人は日々の生活(特に労働環境)に不満があるから引退したいんじゃないかと思うんですが、それって自分の毎日が嫌いだと認めているのと大きく変わらないですよね。それなら引退を目的にする前に、ワークライフバランスのいい場所を探したり、今の自分の興味と合う仕事を探してからでも遅くはないんじゃないでしょうか。
話は変わりますが、私は現在35歳です。お爺ちゃんみたいなこと言いたくないんですけど、一日に集中して働ける時間が20代の頃よりも短くなってるのをここ数年感じます。29歳の頃から筋トレもしてますが、バーベルスクワットや懸垂の回数も全然伸びなくなってしまいました(スクワットに至っては、コロナ発生後に1年以上ジムに行けなかったために以前よりも軽い重量しか挙げられなくなってしまった…)。残りの人生の内の体力と気力が充実している期間が短くなっているのを年々自覚おります。
もし自分の日々の目的が早期引退だとするなら、その残りの人生の内の体力と気力に溢れた時期がその嫌いな毎日で塗りつぶされていくことになります。投資や節約より以上に、日々を有意義に過ごすことに集中した方が人生楽しくなるのでは?
それに加えて、ワークライフバランスの良い職場や続けやすい仕事を見つけられた場合の方が『収入を得る→余剰収入をインデックス等に投資する』というサイクルも持続しやすいんじゃないでしょうかね。もしあなたが私のようにインデックスに投資しているなら、日々の労働生活の満足度を上げた方が、長い目で見たら実はリタイアへの近道かもしれませんよ。
理由3:お金に不自由しなくなってもなんだかんだで働いてそうだから
幸い、自分はソフトウェアエンジニアという仕事が嫌いではないです。この職業のおかげでいろんな国に住めるし、賃金も良いし、自分の性格的にも合ってる気がするし。
ところで、実は私は去年から小規模な事業者向けのウェブシステムを開発しています(完成するまでこのことは秘密にしようと思ってたんですが…)。自分のプログラミング技術を利用して空き時間に自分のビジネスを持ちたいと思っているからです。これを開発することで新しい技術も試せるのでエンジニアとしての技能も上がりますし、MVPと呼べるレベルまで開発できればカバーレターやポートフォリオにも載せれるので、次に転職活動をする時にも利用できるでしょう。
ウェブ開発は私にとって趣味の一つです。仮にお金に困らなくなっても、多分コードを書き続けてる気がします。もしこのシステムにお金を払ってくれる人が見つかったら、それを開発・運用して食っていきたいな…なんて夢をたまに見たいます。
でも…ウェブシステムの開発ってまさに自分が今会社で仕事としてやってることなんですよね。リタイア後に自分がやりたいことって仕事なのか?リタイア後に別の仕事をいずれ始めてしまうなら、リタイアの目的が初めから存在しないのも同然なのでは?
「いやいや、他人から指図されてやる労働と自分で何をやるか決められる仕事は別じゃないか。その辺のサラリーマンが『イーロン・マスクは億万長者だけど働いてる。俺も働いてる。あいつ、俺と一緒やんけ!』とか言ったらおかしいだろ?自分のビジネスを持つのに憧れてるなら、中間目標として早期リタイアを目指すのはありじゃないの?そうすりゃ自分のやりたいことだけに専念できるじゃないか」
あなたはそう思ってるかもしれません。確かに私は自分のビジネスを持つのに憧れてますけど、死んでも絶対に叶えたい夢だというわけでもないですし、営業マンのノルマみたいに達成までの期限が決まっているわけではないのです。むしろ、自分のビジネスを始めたいと朝も夜もキーボードに噛り付き、挙句の果てにバーンアウトしてしまったら本末転倒ですからね。そもそも私が海外で就職したいと思った最大の理由はワークライフバランスの取れた生活を送ることでしたし。
最後に
「じゃあ収入を上げるために一生懸命転職活動したり、毎月の投資額を増やすために節約するのは無駄なのか?」と言われると、もちろんそんなことはありません。
例えば、さっき「引退しても最終的には今と似たような生活に落ち着いてそう」と書きましたが、今の生活を続けていられるのは今の勤め先が利益を出し続けてくれるのが前提の話なんですよね。平たく言えば、今の生活が続けられるのは他人次第なのです。
なので、ワークライフバランスの取れた今の生活を永続するためにFI(経済的自立)は目指す価値のある目標だと思いますし、自分も50台に入る前に到達出来たらいいなと思ってます。その為に今後も数年置き(短くて1年置き、長くとも3年置き)に収入アップの為に転職をし、毎月ETFを買う生活は続けていきます。
でもER(早期リタイア)は自分には早すぎますし、それ自体を目的にしたいとも思わないです。仮に今リタイアしたら緊張感が無くなって呆けそうですし、この職業は自分にとってはアイデンティティみたいなものですから。