キャリア

社会人を辞めてまで留学する事のリスク、そして対策

私は現在31歳です。私と同世代の人たちの中には、「20代からやってきた仕事にもう情熱を持てない」「今の業界で働いても給料が上がらないからキャリアを大きく変えたい」という風に考えている人が多いように思えます。また、そういった人の中には、「外国でキャリアを積みたい」「留学することでキャリアアップしたい」と考えている方もいるようです。

今回はオーストラリアでの留学・就職のみならず、正社員を辞めて海外で正規留学することのリスク、そしてそういったリスクをどう抑るかについて書いていきます。

「正規留学」と書きましたが、これは「専門学校か大学(院)で現地の人と同じ学位をとる留学」のつもりで書きました。語学留学や交換留学は含まれません。

1:退職することの経済的・機会的な損失

社会人を辞めて留学することで発生する機会的な費用を、留学にかかる費用と合わせて計算してみましょう。

  1. まず、社会人のあなたがオーストラリアの大学院に留学することを決心し、IELTSを独学でパスし、行きたい大学院の学費が年間で$24,000だと仮定しましょう。その場合、学費と卒業までにかかる費用は$72,000前後、1豪ドルが85円なら600万円弱です。
  2. 次に、あなたの現在の手取りの年収が400万円だとしましょう。言うまでもなく、その職場から去ることで、その仕事を続けていれば稼げたであろう400万円(1年あたり)は手に入りません。それが2年間続くので、合計800万円を失うこととなります。
  3. 最後に、あなたが在学中にアルバイトなどを一切せず、奨学金などを得られなかったとしたと仮定しましょう。その間の収入はもちろんゼロです。

直接かかる費用 = 約600万円

社会人時代の収入を手放してしまうことの機会的な損失 = 800万円

卒業までの収入 = 0円

合計で約1,400万円の費用が発生します。オーストラリアまでの渡航費や学校で使う教科書代等は入っていません。

(「学費と卒業までにかかる費用は600万円?どうやってそれ計算したんだよ?」と思っている方、以下の記事をご参照ください。)

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例を変えてみましょう。あなたがもし…

  • 有名大学を出て、
  • メガバンク・大手広告代理店・自動車メーカーといった日系の大企業に勤めている、
  • 勤続年数8〜10年以上の、
  • 役職のある30代の会社員

…と仮定すると、退職することの機会的な損失は年間400万円では済まないでしょう。それに加えて、その企業で働き続ければ貰えていただろう退職金を得るチャンスを逃すことにもなります。

話は逸れますが、「俺、日本にいた頃、有名大出身の有名企業に勤めるエリートじゃなくて良かったわ!」と、私は今これを書いていて感じています。

もし私が有名企業のサラリーマンだったら、職を手放すのがもったいなさ過ぎて、700万円以上払って未経験の分野に挑戦するなんて愚かなことはしなかったでしょうから。

もし、あなたがこれから行きたい国に強烈な関心があり、あるいは留学先することに強い使命感を持っているのであれば、機会費用なんて大して気にならないかもしれません。「そんなもん知るか!自分はどうしても〇〇(←行きたい国の名前)で留学したいんだ!あの国じゃなきゃやれないことがあるんだ!」、と。

では、もしあなたがどうしても上記の費用を回収したいのならばどうすればいいのでしょうか?おそらくあなたは…

  1. 賃金が高い国でビザを取り、就職し、キャリアアップしていく
  2. 外資系を狙う
  3. 会社員以外の方法で稼いでいく

といった選択肢を取っていくことになります。いずれにせよ、帰国後に一般的な日系企業に入っても元を取るのは難しいということです。

2:既卒なのに経験が浅いと、日本での再就職が難しい

日系企業の多くが年功序列で賃金を決めています。そのため、一般的に言って日本では年齢が高くなるほど転職できる難易度が上がります。

(この『年を取るほど転職が難しくなる現象』について深く知りたい方、城繁幸氏の「3年で辞めた若者」シリーズがおすすめです。ちょっと古いシリーズですけど、今読んでも十分ためになります。)

結果、仮にあなたが留学先で素晴らしい語学力や技能を身につけても、年齢相応の実績・経験が無いのであれば、再就職が難しくなることが予想されます。

しかし、あなたに年齢相応の経験があり、留学先でこれまで仕事でやってきたことを勉強し続けるなら話は別です。ITで例えるなら、

  1. 日本でソフトウェアエンジニア
  2. 留学先でコンピューターサイエンスかITを専攻
  3. 帰国してもう一度ソフトウェアエンジニア

…といったキャリア設計をしている方なら、キャリアが中断することは大した損失にはならないでしょう。

が、(私のように)留学先で全く未経験な分野に挑戦する場合、この「既卒リスク」は増加します

3:帰国後の生活費不足

海外に長期滞在する際、多くの人は市役所等にて海外転出を行います。その後、あなたは海外滞在中、

  • 住民税
  • 国民健康保険料
  • 年金

…を払わなくていいのです。が、帰国して日本でキャリアを再開する際、その間払っていなかった年金を払わなければなりません。(でなければ、リタイア後の年金受給額が減ります。)1〜2年程度なら大したことないかもしれませんが、学部留学で3〜4年・博士課程留学で5〜6年日本を離れる場合、結構な額になるでしょう。加えて、日本に返ってきた後に国民健康保険料に再加入する際も、自費で保険料を支払わなくてはいけません

もしあなたが留学費と卒業までの生活費で全財産の殆どを使い果たしてしまったら、帰国後に「これまで払ってなかった年金を払ったら預金が無くなった」、なんて状況に陥り、ご家族やア◯ムに助けを求めなくてはならないかもしれません。なので、留学後に日本で働くつもりの方々は、こういった帰国後の支出も多少は考慮しておかないと、帰国後に(一時的でしょうが)生活苦に陥ってしまうというリスクが存在します。

(私の場合、大学院を卒業した時点で預金残高は$2,500くらいで、卒業後に見つかった職場から初めての給料が振り込まれる頃の残高は$1,800でした。仕事が見つかってなかったら…と考えると少しゾッとします。)

こういったリスクを最小限に抑えるには?

以上、会社員を辞めて留学したい方が想定すべきリスクでした。では、こういった経済的なリスク、そして留学後の社会復帰リスクを抑えるためには、どうすればいいのでしょうか?

私が考えているのは…

日本にいる時からコネを作っておこう

学生時代の友人でこういう人がいました。その人はメーカーに勤めている友人がいて、「英語を使って外国人の働けるまで英語が上達したら、雇ってやるよ」と渡豪前に言ってくれたそうです。

もちろん、こういった口約束を100%頼りにするのはどうかと思いますし、留学希望者なら誰だってそんなコネに恵まれるわけではありません。それでも、その人は、そういった申し出をしてくれる人が身近にいたことが「精神的にありがたかった」そうです。

もしあなたが留学後も現在の仕事・業界で働くつもりなら、(そうでない場合と比べると)コネ作りは難しくないでしょうから、留学後の失業リスクを抑えるために、今からできる範囲で努力してみてはどうでしょうか。「自分、〇〇で留学しようと思ってるんだ」、と同業界で働いている友人・知人に知らせておきましょう。

奨学金プログラムを探そう

過去の記事にも書いたのですが、オーストラリアの大学には返済不要の奨学金プログラムを提供している所が多く存在します。QUT(私の母校)もビジネス学部の人たち向けにそういったプログラムを設けていました。

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オーストラリアの場合、こちらのサイトが大学別の奨学金探しに役立ちます。

これから通う学校の情報を得よう

具体的にどんな情報を得るかというと

  1. あなたが行きたい学部・学科の留学生の進路
  2. 中退率

…などです。とりわけ、ひとつ目は現地就職希望者にとって重要です。

オーストラリアの場合、大抵の大学は留学生の受け入れに積極的ですから、大学に問い合わせればそういった資料を見せてくれるかもしれません。

また、あなたが赤の他人に接触することに抵抗が無いのなら、LinkedIn等でこれから通う学校の卒業生にメッセージを送ってみるのも手だと思います。(私は学生時代にこんなことは思い浮かびませんでした。)

もちろん、もしあなたがQUTに通おうかと思っているなら、私もご質問を受け付けます!

外貨の正しい両替・送金方法を知ろう

必死になって工面した留学用の預金を、急激な円高や銀行の送金手数料で損したくないですよね。個人的におすすめする外貨の送金方法はTransferWiseです。

TransferWiseはオンライン上の通貨送金サービスで、会員登録(無料)をしてこれから受け取る通貨の口座を作れば、ブラウザやスマートフォンで送金ができるのです。このサービスの最大のウリは手数料の低さです。公式サイトにもある通り、銀行で送金を行う場合と比べて手数料が最大で8倍ほど安くなるのです。

TransferWise以外にも似たサービスを行っている会社をいくつか存在します。是非そういったオンライン上の両替サービスを利用してみてください。私は円高の時に全財産を普通の銀行で両替して大損しました。私のようにはならないでください…

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余裕を持って留学の予算建てをしよう

最後に、当たり前のようなことを一言。

ギリギリの予算で渡航するのはやめましょう。

卒業した後に預金残高がゼロになるようでは帰国後に困るのはもちろんのこと、在学中も経済的に不安ですと勉強に身が入らないでしょうから。

最後に

社会人を辞めてまで留学することには、もちろんメリットも存在します。(だからこそ、私はこんなサイトを作って自分の経験を提供しているわけです。)そのメリットについては次回書きます。

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